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笑顔の実り。vol.052

こうだ とおるさん|75歳

河内長野市 天見 甲田 通さん

新規就農者と地域をつなぐ

「小さいころはおとなしい性格で、言いたいことが言えませんでした」 農家の両親を手伝い、子どもの頃から畑に出ていた甲田さん。内気な性格の少年を変えたのは、農芸高校との出会いだった。普通の勉強だけでなく、農業や加工品など「農」に関わることを学ぶ。恩師や仲間との出会いを通じ、明るく前向きになっていった。同校出身で2つ先輩の妻、充子(みつこ)さんも「内気だった私も学校のおかげでリーダーシップがとれるまで成長しました」と笑う。 自分を変えてくれた農芸高校に関わる仕事がしたい。そう思った甲田さんは、農業短期大学を卒業後、農芸高校の実習助手をしながら夜間学校に通い、教員免許を取得した。以来45年間、農芸高校で教鞭をとり、農業の基礎知識を教えた。退職した現在も生徒の実習を受け入れ、ブルーベリーの収穫体験を実施するなど、農芸高校と関わり続けている。

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それぞれのやり方

甲田さんが教職に就いている間、実家の田畑を守ったのは妻の充子さんだった。農業の基礎は学校で学んでいたが、最初は分からないことばかり。甲田さんの両親や近所の人に教えてもらいながら、河内長野市 天見の天候に合った方法を学んだ。充子さんのこだわりは、手間暇をかけて育てること。手作業で草を抜き、耕運機を使わずに備中ぐわで田畑を耕す。きつい仕事だが、78歳の現在も元気に畑へ出ている。 甲田さんは、充子さんと真逆の方法で作物を育てている。いま実践しているのは、水稲乾田不耕起直播栽培という「土を耕さずに自然の状態で育てる」栽培方法だ。草も抜かず、肥料は拾ってきた落ち葉を土に被せるだけ。 「他の人が見れば、何をしているんだと思うかもしれません。でも、山の木は土を耕したり、肥料を置かなくてもちゃんと育つでしょう。人の手を加えるから、育ちすぎて病気になったり、虫がわいたりするんです。自然のままにしておくことで、作物は健やかに育ってくれます」 この方法で米を育て今年で3年だ。1年目の収量は75%、2年目は85%に上がったが、3年目は50%まで落ちた。収量が安定するよう、毎年工夫している。甲田さんにとって、田畑は学んだことを実践する「実験場」なのだ。 全く違う方法で育てる甲田夫妻の田畑は、共同のものを除き、完全に別々だ。それぞれが好きな方法で育て、口出しはしない。お互いを尊重し、認め合いながら、農業に没頭している。

元気をくれる存在

退職したら、自分の時間が持てるはず。そう思っていた甲田さんだが、待っていたのは忙しい毎日だった。 「仕事を辞めるとすぐに、地域の役職に就きました。今までは免除してもらっていたので、一気に色々な役職が回ってきました。農作業と地域の仕事に追われ、本当に大変で…。だんだん体調を崩し、入院することになりました」 疲れ切った甲田さんを救ったのは、新規就農者の存在だった。 「教え子が農業を始めたいと言うので、話を聞いてあげたんです。色々アドバイスすると、自分の経験が彼の役に立ったのが嬉しくて、元気が湧いてきました」 自分に出来ることがあるなら、手助けがしたい。この事がきっかけで元気を取り戻し、新規就農者を支援するようになった。 「うちの地域には3人の新規就農者がいます。みんな非農家出身なので、本格的な農業は初めて。収穫や出荷が忙しいときは、妻が待たせてくれたお弁当を一緒に食べることもあります。大切にしているのは、教えるより一緒に作業すること。寄り添いながら支援しています」 甲田さんと新規就農者の集いに参加させてもらった。この日の作業はシイタケの植菌だ。ドリルで木に穴をあけ、シイタケの種駒を金槌で打ち込んでいく。皆慣れた手つきで、作業に淀みがない。 「最初は道具を持つ手が危なっかしくて、見ていてハラハラしました。今はもう大丈夫です」 3人の成長を見て、嬉しそうに話す。農業を始めたい人は多いが、それを受け入れる地域は少ない。新規就農者の相談にのったり、サポートする体制が整っていないからだ。担い手の減少に歯止めをかけるため、甲田さんは地域と新規就農者をつなぐ役割を担っている。

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家族に感謝

農繁期になると、普段は離れて暮らす家族が甲田家に集う。家族総出で農作業を行い、食卓を囲んでご飯を食べる。 「何も言わなくても、子ども達のほうから『今年はいつ集まるの』と連絡をくれます。孫も手伝ってくれるんですよ」 急に入院したとき、甲田さんは米作りを家族に託すことにした。病室から指示を出し、田植えや稲刈りなど、必要な作業を全てやってもらった。 「大変だったけど、家族のありがたみうを実感しました。農業ができるのは、妻や子ども達など家族や、周りの人達のおかげです。本当に感謝しています」 みんなに支えてもらった感謝の気持は、新規就農者を支援することで返している。

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