笑顔の実り「笑顔の実り。vol.053」 |JA大阪南

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笑顔の実り。vol.053

もりもと ひろみつさん|71歳

富田林市 甲田 森元 宏通さん

町の中にある農地

数分ごとに、電車が音を立てて通り過ぎていく。それ以外、線路沿いの住宅街は静かで、周りは建物ばかり。そんな地域の片隅に、 森元さんの田はある。 「こんな所に田んぼがあったんやね」 「町の中だし、家を建てるか、土地を売ったほうが儲かるんじゃないの」 ここで農業をしていると、そう声を掛けられる事も多い。しかし、森元さんはこれからも農業を続け、子ども達に農地を残したいと 考えている。 「町の中にある農地」だからこそある、大変な事や、良い事。今回は、森元さんに話を聞いた。

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田の整備に一苦労

「父親が農業をやっていたのですが、年を取るにつれて体が弱り、農地を他の人に貸すようになりました。私は教師として働いていた事もあり、農業には全く関わっていませんでした」 森元さんが農業を始めるようになったのは、今から15年ほど前だ。父親が亡くなった事がきっかけだった。 「父が亡くなった後、農地をどうすればいいのか悩みました。手放す事も考えましたが、代々受け継いできた土地を自分の代で無くす訳にはいきません。勇気を出して、米作りを始める決心をしました」 しかし、森元さんの苦労はそこから始まった。多くの人に畑として貸していたので、荒れた農地を水田として整備し直す必要がある。土の中には、農業用のビニールや農具の切れ端、カーペットも埋まっていた。手作業でゴミを取り除き、買ったばかりのトラクターで土を耕す作業が始まった。水路の確保や土壌の改善など、やる事は沢山ある。農業の知識がないので、JAで貰った資料を見たり、農業経験者の親戚に助けられ作業した。 結局、米作りが出来るようになったのは、整備を始めてから1年後だった。

田植えの準備

森元さんは田植えと稲刈りをJA大阪南オペレーター部会に委託している。オペレーター部会では、田植えなどの農作業を有料で代行している。 「オペレーター任せだから楽でいいねと言われますが、田植えまでの準備は意外に大変なんですよ」 森元さんの田植え作業を詳しく追ってみよう。まず、5月になるとトラクターでレンゲを二度鋤き込む作業が始まる。月末には肥料を入れ、もう一度耕す。田に水を入れるのもこの頃だ。乾いた田に、しっかり水が入るまで時間がかかる。田に水が入ると景観が一変する。ここにトラクターを入れ、代かきをする。土をコロイド化し、苗を定着しやすくし、水漏れを防ぐためだ。高低差をなくすためでもある。注文した苗が田植えの2週間ほど前に届き、水をやって育てる。成長した苗は田植えの前日に田ごとに分配しておく。ここまでやって、やっと田植えの準備が終わる。ここからが、オペレーターの仕事だ。 「毎年同じ人が来てくれるので、安心感があります。合間にお茶を飲みながら、みんなと話すのが楽しみです」 田植えはだいたい6月の始めに終わる。そして9月半ばまで水の管理が続き、10月初めに収穫する。

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大変な事、良い事

町の中に農地を持つと、色々な苦労がある。その一つがゴミのポイ捨てだ。道路沿いの田畑には、頻繁にゴミが捨てられる。多いのはカン・ビンだが、自転車のサドルやヘルメットが捨てられていた事もある。これらを機械が巻き込むと、故障や事故の原因になる。森元さんは稲刈り作業前に、必ず農地を見て回り、異物が落ちていないか確認する。 「コンバインの刃が折れ、高い修理代を払った事があります。本当に困りますね」 もう一つは、近隣の方との関係だ。農作業は大きな音を出したり、土埃・藁埃が立つ事もある。住宅街の中に農地がある以上、周りに迷惑をかけないよう出来る限り配慮し、機械作業の開始は9時以降と決めている。 「作業前に声かけをしたり、道を汚さないよう気を付けたり、苦情が出ないように注意しています」 色々な苦労はあるが、もちろん良い事もある。 「町中に自然が無いと味気ないでしょ。うちは畑にレンゲを植えているので、景観の美化に役立っていると思います。遮るものがないので、風もよく通りますし」 小学生の子ども達が、農作業を興味深そうに眺めている事もある。水田を身近に見て、普段自分が食べている物が何処からくるのか、学んでいるのかもしれない。

太陽の下で働くこと

「農業なんて自分に出来るかな?と不安でしたが、やってみると太陽の下で働くのが自分に合ってるみたい。毎日元気に動けるのはありがたい事です」 苦労もあるが、出来る範囲で農業を続け、農地を残したいと話す。 「子ども達に米を作れとは言いません。でも、売らずに残しておく事で選択肢が広がる。そのために出来る事をやっていきたいです」 町から田畑が消えても、住民の生活は変わらないかもしれない。しかし、身近な場所に田畑があると、町は美しくなり、人々の心にも余裕が生まれるはずだ。 やはり、どんな場所にも一定の農地は必要なのではないだろうか。

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