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笑顔の実り。vol.063

なかむら ひろみちさん|65歳

大阪狭山市 大野台 中村 弘道さん

どんな事も 試してみる

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新品種のブドウを発見

大阪狭山市の大野地区では、100年以上前からブドウが作られている。「大野ぶどう」の名で知られており、渋みが少なく、糖度が高いことで有名だ。 中村さんの家では、祖父の代からこの地でブドウを作ってきた。子どもの頃から家の仕事を手伝うことが多かったので、自然と「大人になったらブドウ園を継ごう」と考えるようになった。仕事に役立てるため、大学は農学部に進学した。 「大学では、農業用のホルモン剤について研究していました。『キングデラ』や『紅しずく』を育種するきっかけになったのは、研究室での実験がきっかけです」 当時、中村さんは教授らが担当する実験の手伝いをする事が多かった。その中の一つが、巨峰の実どまりを良くするという実験だ。巨峰のおしべを取り除き、子房に別の品種の花粉をかけて、ブドウの着果率を上げる。 大学の実験はここまでだが、中村さんはこの方法で出来た種を育ててみることにした。 「別の品種を掛け合わせることを交配と言いますが、その種を育てると育種になります。品種の組み合わせは無限にありますが、手当り次第に交配してもダメ。やる前から、この2つを掛け合わせれば絶対に良いものが出来るはずだ!と予想を立てておかないといけません」 中村さんは、父親が偶然見つけたデラウエアの突然変異「レッド・パール」に「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を交配し、「キングデラ」を生み出した。レッド・パールは4倍体、マスカット・オブ・アレキサンドリアは2倍体の性質を持つ。この二つを掛け合わせれば、3倍体のブドウが作れるはずだ。3倍体の植物は種子を持たないので、上手くいけばデラウエアより実が大きく、種無しのブドウが作れる。 「3倍体のブドウが生まれる確率は、何百万分の一よりも低いんです。当時は国の試験場でしか成功例が無かったので、成功した時は、本当に驚きました」 採れた種のうち、発芽するのはたった5%。その中から淘汰され、生き残ったブドウの中から「キングデラ」や「紅しずく」「優峰」が生まれた。なんと、民間で国内初の快挙だ。「キングデラ」は種が無く、デラウェアの甘さとマスカットの香りを持つ。大阪府内に留まらず、今や山梨県など全国で栽培されている。 「今も、圃場で色々なブドウを栽培しています。上手く成長するか分かりませんが、どんなブドウが出来るのか楽しみです」

試してみる事の大切さ

「大切にしているのは、どんな事でも試してみること。いかに楽に、いかにエエものを作れるのか常に考えています」  中村さんにとって、ブドウ畑は実験場だ。研究室で実験に取り組んだのと同じように、まずは予想を立て、それを実践し、得たものを次に活かす。その繰り返しが、時に大きな発見に繋がる。 ビニールハウスなどの設備も、実験の一つだ。屋根にガラスやアクリル、紫外線を通さないポリカーボネートなど、違う素材を使っている。加温する時期も、ハウスごとに違う。品種によって、適しているハウスの環境は違うはずだ。「このブドウにはこのハウスが合うかも」と予想し、実際に育ててみる。上手くいかなくても、失敗は来年に活かせばいい。 「最近、ハウスに二酸化炭素を入れる実験を始めました。液化炭酸ガスを自動で注入して、ブドウの成長を促しています」 夜、植物が呼吸をしている間、ハウス内の二酸化炭素濃度は700~800PMにもなる。しかし、朝になり光合成を始めると、一気に300PMまで下がる。これは、外気の濃度よりも低い数値だ。順調に光合成が行えないと、ブドウの生育にも影響が出る。そこで、朝7時から夕方15時までの間、足りない二酸化炭素を注入し、濃度を一定に保てるよう、整備した。おかげで、前年と比べ、ブドウの収量は2割ほどアップし、品質も向上した。 「環境を整えるためにはお金がかかります。それでも、若い頃から制度を利用し、資金を借りてでも投資してきました。時には強気に冒険することも必要です」

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学生時代の気持ち忘れず

大野ぶどうは基本的に産地直売だ。毎年、6月の下旬ごろに販売を開始する。 「詰め合わせを注文する方が多いので、ブドウは1種類だけじゃダメ。お客さんに受ける品種を数種類、開店時から出せるよう準備する必要があります。顧客のリストは登録している人だけで約2500人。毎年販売スタートのお知らせハガキを出しています。待ってくれている人がいると思うと、使命感が湧いてきます」 直売所がオープンすると、慌ただしい毎日が始まる。共にブドウを育てる息子夫婦や妻、パートなど、8人で接客し、全国各地へブドウを送る。忙しい日々を送っているが、農業を引退することは考えていない。 「農家の人って、みんなすごく元気ですよね。90歳の方でも、毎日畑に出て作業してる。そんな人達を見ているから、農業に定年なしと思ってます。気持ちとしては、大学生のころに研究していた時の気持ちがずーっと続いている感じです。これからも初心を大切に頑張りたいですね」 学生時代から今まで、中村さんを突き動かしているのは探究心だ。これからも貪欲に、ブドウの可能性を追い求める。

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