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笑顔の実り。vol.065

うらの まさとさん|66歳

富田林市 木戸山町 浦野 雅人さん

アイガモ農法でつながある絆

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農薬に頼らない農業

「結婚するまで、農業とは無縁の生活を送っていました。妻の実家が農家だったので、最初は仕方なく始めたんです」  今では毎日、浦野さんは田畑に通う。作物を育て、自然と関わることに喜びを感じているそうだ。しかし、最初から順調だったわけではない。非農家出身ゆえの苦労があった。  「初めは何も分からなかったから、親戚のおじさんの指示通りに動いていました。大阪市内から来たので、南河内の言葉や農家の話についていけず、戸惑うことが多かった。本当に大変でした」  ある日「そろそろ田んぼにかすを置け」と指示された。どうやら「かす」とは肥料のことらしい。置けと言われたので、浦野さんは田んぼの入り口に肥料の袋を並べておいた。  「後から、おじさんに『からかっているのか』と怒られました。今では、置くというのは肥料を蒔くという意味だと分かるのですが」  肥料や農薬の知識が無かったので、草むしりにも苦労した。草を抜いても抜いても、後からどんどん生えてくる。困り果てて、JAの職員に尋ねると、除草剤の存在を教えてもらった。試しに使ってみると、見事に草は無くなった。しかし、浦野さんはそこに違和感を感じた。どうして草が生えないのか。草を抜かず、自然のまま育ててはいけないのか。  「もちろん、農薬は正しく使えば安全だし、農薬を使うこと自体を否定するつもりは全くありません。でも、自分で野菜を作るなら、化学肥料や農薬に頼らない有機農法で作ってみたいと考えるようになったんです」  浦野さんは30代半ばで勤めていた会社を退職し、畑で様々な実験を行うようになった。

アイガモ農法との出会い

 自然の力を借りて、作物を育てることは出来ないか?様々な本を読み、調べるうちに辿りついたのは、アイガモ農法だった。  「和歌山県の農家へ視察に行って勉強した後、すぐに自分の田んぼで実践しました。分からないことが多く、本だけが頼りでした」  浦野さんは、6月になると専門業者からアイガモの雛を買う。すぐには泳げないので、水慣れをさせ、ある程度の大きさまで育てるそうだ。田植えが終わり、薬をまくタイミングがきたら、除草剤の代わりにアイガモのデビューだ。田に放し、害虫や浮草、雑草などを食べさせる。田んぼを綺麗にしてくれるだけでなく、排泄物は自然の肥料になる。苗が成長すると、アイガモは稲を食べてしまう。そのため、苗が大きくなったらアイガモを捕獲し、卵を産むメス以外はさばいて食用にする。  「処理の方法を学び、毎年自分でアイガモをさばいています。食べるなんて可愛そうだと言う方もいますが、育てた者が最後まで責任を持ち、美味しく食べることが大切だと思うんです」  子どもの頃から生き物が好きなので、田に行くのは苦にならない。米の成長と共に、アイガモの成長も見守っている。  「田んぼに入ると、アイガモが後ろをついてくるんです。自然の中で動物と触れ合うのは楽しいひと時です」

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人と人の繋がり

「若いうちから農業を始めたので、地域の集まりに顔を出し、地元の方と話す機会が沢山ありました。水路の水の入れ方など、知らない事をずいぶん教えてもらいました。人と人との繋がりが、今の農業に活かされていると思います」  毎年、アイガモを田に放す時は、近所の幼稚園児を招待する。アイガモを手に持たせ、園児が一羽ずつ田の中に放鳥する。園児にとっても、浦野さんにとっても、楽しみな行事だ。  基本的に、作った米や野菜は自分の家で食べているが、時々お店に出荷している。出荷先は、自然食のレストラン。オーナーは野菜の特性を熟知しており、普通では思いつかないような食べ方で調理する。こんな野菜を作って欲しいとオーダーされることもあり、やりがいに繋がっている。  「周りの人との縁のおかげで、今の自分があると感じています。中でも、ずっと一緒に農業をやってきた妻には、感謝の気持ちでいっぱいです。嫁いだ娘や、娘の旦那さんも、忙しい時期は手伝いに来てくれます。ありがたいですね」  後継者のことは心配だが、誰かに強制して継がせようとは考えていない。嫌なのに我慢して農業をしても、長くは続かない。楽しんでやるほうが、長続きするはずだ。  浦野さんは20年ほど、アイガモ農法を農芸高校の生徒に教える活動をしていた。生徒のほとんどは非農家出身だ。  「みんな農業が大好きで、熱心に話を聞いてくれます。好き!という強い気持ちがあれば、大変でも続けていけると思うんですよね。私は人を雇って指導することは出来ないけど、若い人に自分の知識を伝えることで、少しでも次世代に貢献できたらと思っています」  いつか誰かが、浦野さんの意志を継いで農業を始めるかもしれない。

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